同人雑誌『まんじ』寄稿文書一覧

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同人雑誌『まんじ』寄稿文書一覧

146号掲載「農ある暮らし~私の日常~」(5)

「農ある暮らし~私の日常~」(5)
(→pdf でもご覧頂けます)


お裾分け

農業で暮らしています
米に野菜にみかんに柿
他にも色々作っています
大地の恵みに感謝します
実りの季節 
あー良く出来たと 喜ぶ年も
あー残念だと  嘆いた年も
鳥や獣が食べる分の米や野菜を残します
少しばかりのお裾分け、いいえ、お福分けですね

雀が集まってきました
ハトもギジもノネズミと
色んな命が生きています
残した米を食べています
実りの季節 

あー良く出来たと 喜ぶ年も
あー残念だと  嘆いた年も
鳥や獣が食べる分のみかんや柿を残します
少しばかりのお裾分け、いいえ、お福分けですね
大地の恵みに感謝します

 
 

棚に残された梨

あれほど元気だった叔父が病気で臥せっています
もっと早くお医者さんに行っていればと
奥さんが涙を見せました
米作りは村一番
梨の甘さも村一番
数えきれない表彰状が奥の座敷を飾っていました

きっと我慢をして仕事を続けていたのでしよう
梨の収穫が一段落するまではと
無理を重ねていたのでしょう
仕事振りは村一番
面倒見も村一番
見舞いに来た人たちが奥の座敷を心配しています

丹精込めて育てた梨がまだ棚に残っています
あと一日もう一日頑張ればと
思う梨の数になっていました
米作りは村一番
梨の甘さも村一番
働き者の優しい叔父は奥の座敷で眠っています
棚に残された梨が何故か寂しそうに揺れていました

 

小春日和

小春日和で思い出すのは
遠い日に逝った祖父のことです
日向ぼっこが日課になって
縁側でくつろぐ祖父の姿です
うとうと、こっくり
気持ち良さそうに居眠りをしていましたね
うとうと、こっくり
そんな時間がゆっくり流れる
小春日和です

日毎寒さが増す頃に
大根干しが始まります
一番つらい水洗いは
家族みんなですることが決まりです
大寒(おおさむ)、小寒(こさむ)
山から小僧がやって来る歌がありましたね
大寒(おおさむ)、小寒(こさむ)
山から小僧がやって来る
冷たい水です

うとうと、こっくり
明日の予報はポカポカ陽気になるそうですね
うとうと、こっくり
今では父が居眠りをしている
小春日和です


 地方都市

地方都市に陰りが見え始めています
大手老舗のデパートが出ていくそうです
村の暮らしがどうにも辛くなりました
町に出るしか暮らす術はありません
病院もある
スーパーもある
歩いて用が足りる町なのに
何故か寂しく心もとない気がします

地方都市に陰りが見え始めています
馴染みの店ももう時期閉めるそうです
町に来た時は必ず寄った店でした
妻の好きな雑貨がいつもありました
駅にも近い
コンビニもある
全てが揃った便利な町なのに
何故か寂しい村の匂いを感じます

まんじ142号「農ある暮らし~私の日常~」(1)
まんじ143号「農ある暮らし~私の日常~」(2)
まんじ144号「農ある暮らし~私の日常~」(3) 
まんじ145号「農ある暮らし~私の日常~」(4) 
まんじ146号「農ある暮らし~私の日常~」(5) 
まんじ147号「農ある暮らし~私の日常~」(6) 
まんじ148号「農ある暮らし~私の日常~」(7)