同人雑誌『まんじ』寄稿文書一覧

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133号掲載「グリーン・エステート」

グリーン・エステート 滞在型アパートメントによる「クラインガルテン」
(→pdf でもご覧頂けます)


英語で「estate」は、土地や資産、財産権、社会身分などのことです。不動産のことをアメリカでは一般に「real estate」と言います。
農と不動産をセットにした農業・農村ビジネスを「グリーン・エステート」と称し、農業と不動産業の大いなる可能性にチャレンジします。

従来、農業と不動産業をセットにした農業経営手法にクラインガルテンがあります。クラインガルテンとは、農園付き別荘または、簡易宿泊施設のある滞在型市民農園のことで、その起源は19世紀初頭のドイツとされています。
我が国でもクラインガルテンを新たな農業経営手法として取り入れる市町村が現れています。今回の提案は、このクラインガルテンの経営手法の幅を広げることで「農ある暮らし」を楽しむ人を農村などの地域に呼び入れ、ビジネスとして成り立たせる取り組みです。
政府は、現在、経済が好転しつつあるとしていますが、まだまだ日々の暮らしに反映されていないのが現状です。

企業は、自社の経営改善のため社員のリストラを敢行し、その結果、社員の数は激減し、それを派遣社員やアルバイトなどで補っています。そして、人口は増えることはなく、今まで満室であったアパートメントも空き室が目立つようになりました。
都市部の農家では、市街化区域の農地と調整区域の農地の双方を所有している農家が一般的であります。
市街化区域の農地については、生産緑地や相続税の納税猶予されている農地を除くほとんどが、宅地や雑種地に転用されています。従って、農家は、農地の活用として、調整区域の農地は、田や畑を確保して農業を行い、市街化区域では、アパートメントや駐車場等の不動産業としての資産管理を行うなど、農業と不動産による収入で生計を立てています。

調整区域での農業も高齢化や担い手不足などの要因により、遊休化しつつある農地が目立つようになりました。しかし、皮肉なことに、農家以外の市民は、自分の食べる物は、自分で作りたいという「自給自足」ができる「農ある暮らし」を求めるニーズが高まっています。
市民農園では、狭すぎる、しかし、それ以上の農地は、農家以外には、借り受けることができないと頭から決め込んでいます。南足柄市の新たな農業参入システム(※南足柄市新規就農基準と※市民農業者制度)を活用すれば、誰でもが農業に参入できることをアピールする必要があると考えます。
農地の貸し借りについては、農業経営基盤強化促進法による契約のため、市町村が契約当事者となり、農地を借り受ける者(市民)への権利移動は発生しません。そのため、農地を貸し出すもの(農家)は、安心して農地を貸すことができます。
南足柄市農業委員会事務局には、毎年100件ほどの新規就農の相談がありますが、問題となることは、農業参入できる仕組みはあるが、その拠点となる家やアパートメントがないことです。
そこで、新規に農業を目指す者の拠点として、例えば、週末に農業ができる環境を創りだすことです。従来のアパートメント経営を払拭し、居住型から滞在型に変更し、農と不動産をセットにした農業・農村ビジネス「グリーン・エステート」に、農業の将来を見出すべきと考えます。
アパートメント等の賃貸料については、滞在型では、従来の居住型に比べ、家賃を下げなければなりませんが、空き室があるより、はるかに効率的であり、所有している調整区域の農地も農地のまま活用することができます。
南足柄市の農業参入システムを活用した「グリーン・エステート」を全国どこでもできるよう、現在、衆議院議員・松田学氏とともに、その法制化に向けて行動を起こしています。
「グリーン・エステート」の農業経営手法が広がることにより、市民の農業への参入が促進され、その結果、農業への理解者が全国的規模に広がるものと考えます。更に、都市住民との交流をコラボした「グリーンツーリズム」(都市住民の農村での余暇活動)を作り上げ、日本ならではの農業・農村ビジネスへと発展させたい。

※南足柄市新規就農基準
耕作面積1000㎡以上で農家を目指す就農希望者を対象にした農業参入システム(平成20年10月1日、南足柄市施行)

※市民農業者制度
耕作面積1000㎡から300㎡で市民農園より規模の広い農業を目指す就農希望者を対象にした農業参入システム(平成21年9月1日、南足柄市施行)

山梨県 高根クラインガルテン