同人雑誌『まんじ』寄稿文書一覧

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134号掲載「農地の社会化」

農地の社会化 パブリックフットパス〜グリーンツーリズムへ
(→pdf でもご覧頂けます)

グリーンツーリズムとは、ヨーロッパで発祥した都市と農村の交流のことで、都市住民が農村で休暇を過ごす余暇活動のことです。
グリーンツーリズムの基本的な考え方は、農山漁村に住む人々と、都会に住む人々とのふれあい、つまり、都市と農山漁村との住民どうしの交流の場であります。
ヨーロッパでは、都市住民が農村や漁村などに長期滞在してのんびりと過ごすことが定着しています。
しかし、我が国では、長期休暇が取りにくい労働環境のため、日帰りや短期滞在が多いのが現状です。長期休暇が取れるような環境づくりを法的に整備する必要があると考えます。
このグリーンツーリズムを我が国で定着、発展させるためには、農家の農地への所有、使用に対する意識変革が必要と考えます。
私は、平成10年以来、花による地域おこしを地域住民とともに進めて来ました。
そして、その花のエリアは、農道や河川などの公共用地を活用しました。
 次に取り組んだ花による地域おこしの花のエリアは、遊休化した農地に求めました。
農地は、本来、私的な資産でありますが、公共的な資産として、活用すべきという考えに基づき、誰でもが入ることができるよう農地を解放することにしました。
私は、この取り組みを「農地の社会化」と称しています。そして、遊休化した農地に、ザル菊(ザルを伏せたように咲く菊)を植え、その周りに回遊路を設置しました。回遊路には、幅1.2mほどのゴムシートを敷き、車椅子の人でもスムーズに通行ができるよう工夫をしました。

自由に入れる回遊路 南足柄市ユートピア農園

このような発想の原点は、1949年に制定されたというイギリスのパブリックフットパスの制度にあります。
パブリックフットパスとは、主に歩行者に通行権が保障されている小径で、イギリスで発祥した「歩くことを楽しむための道」のことです。そして、農村部の農場や牧場などの作業路を公共の散歩道として認めているものです。
そして、現在、イギリス全土に網の目のごとく存在し、その長さは、約17万kmにもなるとのことです。
イギリスでは、農地そのものを国民の共有の財産だという理念に基づき、農場や牧場などの作業路を公共財的に使用し、農村空間そのものを共有化しました。このパブリックフットパスが制度化されることにより、市民は、農家に迷惑がかからない範囲で、作業路の通行が許可されています。
市民は、この作業路を利用して、例えば、綿花畑の綿を触り、その柔らかさを感じたり、牧場の牛を直接撫でて、その体温の温かさを知ったりすることなど都会では得ることのできない体験ができることです。
そして、一番の魅力は、農場主や牧場主などとの会話を通して知る、親しみや、癒しなどの心情面での満足度にあるようです。
このように、イギリスでは、1950年代すでに、農地を公共財として、活用することにより、農村へ都市住民を呼ぶ環境づくりを法制化していました。
その結果、パブリックフットパスが全国に広がり、都市住民が農村に癒しを求め、旅をするグリーンツーリズムが、新たな農村のビジネスとして発展しました。今では、このグリーンツーリズムによる収入が、農家の年間収入の3割を占めるほどになっているとのことです。
そして、こうした農村の暮らしが人間らしい生き方として、国民に理解され、農村で農業をして生活することにあこがれる人々が増えているとのことです。
従って、農村の嫁不足も解消され、農業の担い手も心配することはなくなったとのことです。
こうしたイギリスのパブリックフットパスからグリーンツーリズムへの発展を参考にして、我が国でも農地を公共財として国民全体で共有する、すなわち、「農地の社会化」を国策として取り組み、農業・農村の活性化を目指す時代がきていると考えます。
時を同じくして、安倍晋三首相は、地方の人口減少や地方経済の衰退などの課題に国を挙げて取り組むため、2014年9月3日に行った内閣改造で「地方創生」の担当大臣に石破茂衆議院議員を任命しています。そして、首相みずから本部長とする「まち・ひと・しごと創生本部」を立ち上げました。
地方に、「まち・ひと・しごと」を作り出すことの必要性は誰しもが理解するところです。しかし、如何なる手法を持ってその課題解決をなすべきかを考えた時、1949年に制定されたというイギリスのパブリックフットパスの制度を参考にした日本版の法制化は、地方に光明をもたらす未来志向の政治主導と考えます。安倍さん、石破さんにこの声が届くことを願いつつ、「農地の社会化」~
パブリックフットパスからグリーンツーリズム~を結びたいと思います